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そぶりをやめて
第5章 2ヶ月
「ここの温泉付きのなんか、良さそうじゃん?どう?」
「こっちの無人島みたいなのも気になるんだけど」

2人で、あちこちのサイトを吟味する。

調べているだけで楽しくて、あんなに避けていたグランピングが楽しみになってきた。

「やば。見てたら止まらないよ。そろそろ、ご飯の時間だよね」
「...そういや、ハラヘッタ」

材料は。
貰ってきたばかりの、実家の野菜が山ほどある。
キャベツにアスパラ、トマトにスナップエンドウ。
そして、母親が作ったお惣菜たちも、少し貰ってきた。

作るのは、野菜炒めか、野菜スープか。
野菜たっぷりでキーマカレーという手もある。

「何食べたい? 」

そう言う汐里が取り出したのは、包丁でもフライパンでも無く、スマホ。

まだまだ家事初心者の為、クッ〇パッドが欠かせない。
レシピ通りに作れば、なんとか料理になるからスゴい。

キャベツが沢山あるから、キャベツのなにかしら炒め物かな。

「あ、昨日とか、今日のお昼は何食べたの?まさか...」
「正解!牛丼でした〜!!」

佳佑は、昔から丼物が好きで。
独身時代の晩ご飯は、牛丼チェーン店とカレー店の繰り返しだったらしい。
勿論、大盛り。
それをかきこむように食べる。

そら、太るわ〜。

結婚してから、汐里の実家のおかげと、一応下手なりにも頑張って作る汐里のおかげで、野菜をよく食べるようになった。

「せっかく痩せてきてんのに〜」
「そうかな」

佳佑が、自分の脇腹をつまむようにぽよぽよ触っている。
Tシャツの薄い生地の向こうで、たるんだお肉が揺れている。

突然の奇行に汐里が吹き出し、横にいた佳佑の肩を叩く。

「ちょ。なにそれ。やめなよ〜」

「ここの肉さえなければなぁ」

確かに、浮き輪のように、お腹周りがぷっくりしている。
丼物を控えて、少し運動すればスグ取れそうなのに。

ダメだ、見てたら笑えちゃう。

汐里はスマホ片手にキッチンに入って作業を始める。

「やっぱり、たなっちも細マッチョ派?」

カウンターの向こうから佳佑が聞いてくる。

「うーん。...マッチョじゃあない。かな」

汐里が愛してやまない、バンドのボーカルを思い浮かべる。
細い体に黒のスキニー。
サラサラの長い髪と、白い肌、気だるい雰囲気。
そして、カリスマ的ソングライティング。
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