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世界で一番身近な女
第2章 姉の葛藤
自転車をかっ飛ばして
なんとか目的のカラオケボックスに着くのと
大場たちがやってくるのが同時だった。
「すげえな、ちゃんと時間通りに来たんだ」
自転車を降りると同時に
一気に汗が噴き出した。
「だ、だって…15分で来いって…言ったから」
ハアハア、ゼエゼエと息が上がってしまって
途切れとぎれに語るのが精一杯だった。
「すごい汗だわ…
このハンカチを使って」
乃梨子ちゃんがスッとピンク色の可愛いハンカチを差し出してくれた。
「ありがとう」
汗が滴り落ちていたから
すぐさまハンカチの色が濃くなった。
「助かったよ」
ハンカチを返そうとしたら、乃梨子ちゃんは受けとるのを躊躇った。
「すぐ返すなよ
普通さぁ、洗って綺麗にしてから返すだろ!」
野暮ったい奴だなと
大場が突っ込んでくれた。
「あ、そっか…
じゃあ、これ、綺麗にしてから返すから借りておくね」
ハンカチをポケットに捩じ込みながら
なんだか乃梨子ちゃんを手にいれたような気分になった。
「さあ、今夜はおもいっきり歌おうぜ!!」
大場は、受付で高校生だと告げずに
18歳以上の一般で受付をした。
「何で?学生証を出したら安くなるのに」
「大人って事にしとかないと呑めないだろ?」
大場はそう言ってコンビニの袋からウイスキーの小瓶を俺に見せた。
「えっ?お酒呑むの?」
「しっ!声がでけえよ!いいじゃん、俺たち体はもう大人みたいなもんだしさ」
そう言って大場たちと意気揚々とカラオケルームに入室した。
「とりあえずさ、大介が歌え!」
そう言って無理やり大場は俺にマイクを握らせた。
歌には自信があったので、
乃梨子ちゃんをキュンとさせるために得意の尾崎豊の「OH MY LITTLE GIRL」を選曲した。
「お前、一曲目の選曲がおかしいって!」
大介の歌唱に耳も貸さずに大場たちはコークハイを作り出した。
ただ一人、乃梨子ちゃんだけは真剣に俺の歌を聴いてくれた。