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世界で一番身近な女
第4章 元サヤの二人

ピピピピ…

けたたましいスマホのアラーム音で紗希は目を覚ました。
アラーム音のパターンで、それが彼のスマホから発しているのがわかった。

『男のくせに、アラームを設定してあるなんて、そういうところはちゃんとしているのね』

紗希は眠け眼で彼のスマホに手をやってアラームを止めた。

あんなにけたたましい音だったにも関わらず、
正樹はまるで死んだように眠り続けている。

「夕べは頑張ってくれたもんね」

紗希は体を起こして正樹の寝顔をしみじみと観察した。
頬には、うっすらと髭が伸びてきている。
その頬は、まるで大病したかのようにげっそりとしていた。

『やだ、一晩で?』

精力を使い果たした正樹は、その疲れが顔に浮かんでいた。

こんなになるまで私を愛してくれたんだ…

そう思うと、ますます彼が愛しくなってくる。
彼のスマホを元の場所に戻して、今度は自分のスマホを手に取った。

画面いっぱいに未読のLINEやら、着信履歴で埋めつくされている。
その相手はすべて弟の大介からであった。

『あちゃ~…やっちゃった…』

朝帰りなどするつもりはなかった。
ほんの一回だけ正樹に抱かれて、日付が変わるまでに帰宅するつもりだったのに、正樹に逝かされ続けて失神させられ、爆睡してしまったのだ。

「大介、怒っているわね…」

疲れきっている正樹を起こすのも可愛そうなので
紗希はソッとベッドを抜け出して着衣を済ませた。

「ごめん…また連絡するからね」

げっそりとした彼の頬にチュッとキスをして
紗希は急いで帰宅した。

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