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世界で一番身近な女
第8章 夜の学校
「なあ、散歩するために僕を呼び出したのかよ」
フェンス沿いに歩き続ける乃梨子の背中に向かって、大介は不満を口にした。
「それは後のお楽しみ」
そう言うと乃梨子は、ある場所で急にしゃがみ始めた。
「乃梨子さん?」
「しっ!ここよ、ここだけフェンスが破れているの」
大介もしゃがんで乃梨子の背後から前方のフェンスを覗いた。
確かに彼女の言う通り、人が潜り抜けることが出来るぐらいの穴が空いている。
「ここから学校に忍び込むの」
「忍び込む?忍び込んでどうするのさ
校舎は施錠されているし、警備員が見回りに来るんだぜ」
「校舎じゃないわ。つべこべ言わずについていらっしゃいな」
四つん這いになってフェンスの穴を潜る乃梨子。
大介もすぐ後ろから同じように四つん這いになって続いた。
目の前には乃梨子の可愛いヒップが揺れていた。
電車の連結のようにヒップに顔を近づけると、心なしか女の匂いがするような気がした。
フェンスを潜り抜けると、
乃梨子は校舎とは逆の方に歩き始める。
「どこに行くんだい?
そろそろ教えてくれてもいいだろ?」
「あそこよ、あの建物よ」
暗がりでよく見えなかったけど、
乃梨子が指さす先には、校庭の片隅に建てられたプレハブ小屋があった。
「あそこって…確か美術室だったよね?」
専攻科目ではなかったから、
大介はそのプレハブ小屋に脚を踏み入れたことはなかった。
「あそこの出入り口は鍵が壊れていて
いつでも部屋に入れるの」
ようやく全貌が見えてきた気がした。
おそらく乃梨子は、その美術室をラブホテル代わりに使おうとしているのだ。
美術室は真っ暗かと思っていたが、
今夜は満月で月の明かりが窓から射し込んで、なかなかいいムードだった。