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禁断の自由形
第1章 水泳部の夏合宿
「情けない男…」
誰かがポツリと呟いた。

「まっ、待ってくれ!時間をくれ…
そうだ、合宿はまだ5日ある。
毎晩、二人ずつ抱いてやろう。
決してガッカリさせない自信がある!
絶対に君たちを満足させてみせる」

男の意地が思いもよらぬことを口走らせた。
「本当ね?」
「絶対に?」
そう言うと女の子の群衆は吉本の身体から離れ、 まるでゲームの順番を決めるように女の子たちはジャンケンを始めた。

群衆から解き放された吉本のもとへ育子が駆け寄った。
「大丈夫?」
グッタリしている吉本の身体の疲労を心配しての問いかけに
「大丈夫、2人ずつならなんとかなる」とトンチンカンな返答をした。

約束どおり吉本は女の子たち全員を順番に抱いた。 この件は内緒にしておいてくれと固い口約束をしたものの、この合宿のことは噂となり学校中を駆け巡った。

誰が漏らしたとかそんなことはどうでもよかった。

育美を愛した瞬間から吉本は教員として身を引こうと思っていた。

学校に辞表を提出して吉本は遠く離れた町のスイミングスクールのコーチとして職を得た。
所得は思いのほか低賃金だったが、
吉本は幸せだった。

あの夏合宿から3年の月日が流れようとしていた。 今日もコーチングを終え、クタクタになりながらマンションに帰り着いた。

ドアを開けると美味しそうな夕餉の香りがした。 「あなた、お帰りなさい…
今日ね、お腹の赤ちゃんが動いたの」

日を追うごとに母の顔になってゆく育美が幸せそうに笑った。 完
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