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バツイチと言わせない
第7章 決着
希美子宅への夜の訪問者は笹崎だった。
ドアを開けて招き入れると
ずかずかとリビングまで進むとソファにどっかりと腰を降ろした。

「どうしてここが…」
笹崎には転居先を秘密にしていた。
密かに笹崎から別れるつもりだった。

「水くさいではないですか、
黙って引っ越すなんて。
何度電話してもなしのつぶてという態度は 好きではないですなあ」

「どうしてここがわかったんですか?」

「今の世の中、GPSという便利なものがあるのですよ。
将来的にこんなこともあろうかと
貴女のスマホに細工させていただきました」

「ひどい…」

「ひどいのは君だ!私には君が必要なんだ。
君だって私が必要なはずだ。違うかね!」

確かに安定した暮らしを望むのであれば
笹崎という男にくっついていた方が良いのであろう。

だがその見返りに躰を求めて来られるのが
何よりも苦痛なのだ。

「肉体関係なしで
お互いに仕事のパートナーとしてお付き合いしてくださるのでしたら私は喜んであなたとお仕事をさせていただきますわ」

「すでに心は私から離れていると言うのだね」

離れるもなにも
最初から今まで一度たりとも
心を通わせたことなどなかった。
「…わかった」

少しばかりの沈黙の後、笹崎はポツリとそう言った。

「君の意見を尊重しよう」

笹崎は立ち上がって右手を差し出した。
今後は仕事のパートナーとしてだけの関係でよろしく頼むと言った。

「わかってくださって嬉しいわ」

希美子が握手しようとした瞬間、
笹崎は身を翻して希美子を羽交い締めにした。
そしてポケットからハンカチを取り出すと希美子の鼻と口を塞いだ。

「な、なにを…」

希美子の意識が朦朧とする。
ハンカチには薬品が染みこんでいた。
希美子は朦朧としながらもかろうじて意識があった。

「ちっ!時間がかかったから効果が薄れたか」

本当はぐっすりと眠らせたかったのだが…
そうつぶやきながら笹崎は希美子を抱えて寝室に向かった。

希美子をベッドに放り投げると
笹崎は鞄からカメラを取り出した。
今後も肉体関係を強要するために
裸の写真を交渉の道具にするつもりだ。


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