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蒼い月光~くの一物語~
第12章 朱里の誠の敵討ち

「朱里‥‥今夜は、お前が好きだった
草餅を作って枕元に供えてあげるからね」

「あの家は、
お前が暮らしていたころのままだよ‥‥
懐かしいだろ?
一刻も早く連れ帰ってあげるからな」


夫婦は、代わる代わる棺の中の亡骸に話しかけた。

もはや朱里は返答もしない冷たい骸であったが、
夫妻は朱里がただ眠っているだけなのだと
思いたくて、絶えることなくしゃべり続けた。

あまりの峠の険しさに、
少し休もうかと歩みを止めたその時、
何本もの矢が二人を襲った。

「はっ!?」

二人は瞬間的に身をかわし、地面に転がった。


『悪いことは云わぬ!
その財宝を納めた箱を置いて立ち去れい!!』

木々の枝葉がビリビリと震えるような
ドスの利いた低い声が二人に投げかけられた。


「いえ、これは娘の亡骸を納めた棺でございます。
儂(わし)らは、名も無き貧しい百姓でございます、
どうか見過ごし下さいませ」

手裏剣と忍び刀さえあれば、
こんな山賊に負けない自信があった。

だが、生憎の丸腰だったので
どうにか穏便に事を済まそうとした。

『ふふふ・・・おもしろい。
命が惜しくないとみえる』

ガサガサガサと草木を掻き分けて
山賊軍団が姿を現した。


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