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蒼い月光~くの一物語~
第13章 決戦!
朱里自身はいくらでも呼吸を止めて
水中に潜る自信があったが、
千代の体には限界があった。
身体の全細胞が酸素を求め始めた。
着物を脱ぎ捨てなければ‥‥
とにかく手足を自由にしないと
このままでは溺れてしまう。
水中では帯が容易に解けない‥‥
やがて意識が遠のきはじめた。
目の前が暗くなってゆく。
千代の霊魂が離脱しようとしていた。
『ダメ!千代!まだ逝ってはダメ!!』
朱里が離脱しかける千代の霊魂を
必死につなぎ止めた。
その時だった 千代の帯を掴み、
グイっと引き寄せる者がいた。
兵吉が沈みゆく千代を見つけ、
救助に来たのだった。
着物の水の抵抗は凄まじく、
ともすれば川底へ
共に引きずり込まれそうになった。
『急がねば・・・!!!』
千代はすでに意識がなかった。
華奢な兵吉は身軽で上忍の類であったが、
水難の者を救助する訓練など
受けていなかったので難儀した。
歯を食いしばり、必死に水を掻いた。
どうにか岸辺に引きずり出したが、
すでに千代は呼吸していなかった。
「ごめん!!!」
意識のない千代に謝りをいれて
急いで帯を解き、心の蔵のあたりを押した。
今までに実際に施したことはなかったが、
たしか蘇生術とは
心の蔵のあるところを手で押すのだと聞いていた。