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蒼い月光~くの一物語~
第1章 序章
。。。。。。。。。。
くのいち朱里(あかり)は血生臭い草原を、
身を低くして疾走していた。
すぐ脇を敵軍の足軽兵が
勝利を確信して走って行く。
朱里は細心の注意を払い、
なるべく戦場から距離をおいて
藪のなかを突き進んだ。
手にしている小太刀は刃こぼれして
ボロボロの状態だった。
今、敵方に遭遇しても
太刀打ちするどころか
手負いの兵にすることさえ
ままならないであろう…
時に世は、後に言われる戦国時代。
語り継がれる大きな合戦だけでなく、
武将として名を上げんとして、
小さな合戦が日本全国、
いたるところで繰り広げられていた。
女忍の朱里が仕(つか)える
今成貞虎(いまなりさだとら)もまた、
勢力を拡大しようと隣国に攻め入っていた。
多勢に無勢で勝ち目はなかったが、
武将として自国の民や百姓のため
生き残りをかけて
捨て身の戦いに討ってでたのであった。
負け戦は目に見えていた。
劣勢の中、
貞虎は朱里に敵将の首を討ってこいと命じた。
合戦は将棋と同じように
敵将の首を捕った時点で勝利となる。
小国が大国に勝つために、
狙うは敵将の首ひとつであった。
朱里は女とはいえ、
忍(しのび)としては一流の腕をもっていた。
小さな流派でなく、
伊賀や甲賀の忍として生まれていたなら、
間違いなく上級の忍として、
名のある武将に仕えていたはずである。