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TRUE COLORS  ~PURPLE~
第8章 “part-time lover”
ASAHINAから帰るタクシーの中で、

サオリはいつになく上機嫌だった。

上機嫌なのは、悪くないのだけど。

……………なんか気に入らない。

言い様のないモヤモヤしたまま、サオリに声を掛ける。

「サオリ、今夜夕食はどうする?」

「う~ん。昨日残ったマグロのお刺身、

漬けにしたのがあるからそれでマグロの漬け丼にしようっかな。

レイも一緒に食べる?」

ニコニコ笑顔でそう誘ってくれる。

「ありがと。でも、今夜ちょっと出掛けるから、いいわ。」

えっ!という表情を見せ、

「そうよね、レイの時間をを私がずっと独占しちゃってるものね。」

小首をかしげ少し寂しそうに笑う。

「プロットの続きやりたいし。

 調べたいこともたくさん出てきたから、お家で大人しくしてるから、

 レイは安心してお出掛けしてきて?」

………やめて。そんな顔しないで。そんな気を使わないで。



サオリをマンションに送り届け、私はとあるお店に向かう。

“part-time lover”へ。

店に入り、カウンター席につく。

今日はそこそこの客入りだわね。

「ジントニック頂戴。」

カウンターの若いボーイにそう声を掛ける。

「やあ、キレイなブロンドだね。ひとり?」

隣の席に鍛え上げて引き締まった肉体に

ぴったりと張り付いたような黒いTシャツを着た

黒人男性が座ってきて声を掛けてくる。

米軍兵士かしら。

「ありがと。」

出されたジントニックを一口飲んで答える。

束ねたブロンドの髪をひと房手に取りながら流し目を寄越してくる。

そう、ここは私と同じ性的嗜好を持った者たちが集う店。

「ごめんね、今日はもうお目当てがいるの。また今度、して?」

流し目を黒人男性にくれながら、彼の鍛えられた太ももに手を添える。

欲望のままに抱かれるなら、彼は、タイプだ。

わかったよと笑いながら手を振り、私から離れ今夜の“part-time lover”を探しに、

他の人たちの中に戻っていく彼を見送っている時。

「やあ、レイ。」

カウンターの向こうから私を呼ぶ声。

少し、直人に似た彼。

ここ“part-time lover”のオーナーでマスターの雅人が微笑んでいた。

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