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TRUE COLORS ~PURPLE~
第9章 Lily of the valley

何よ、ずいぶん遅かったじゃない。
朝比奈と一緒に桜井のオフィスに帰ってきたサオリは
何も言わなかったが、見れば分かる。
平静を装っているが。かなり上機嫌だ。
桜井は必死に笑いを堪えている。
あの桜井の様子からして、私がサオリを見て分かるように、
桜井も朝比奈を見て分かることがあるのだろう。
桜井は面白いみたいだけど。私はちっとも面白くないんですからね!
と桜井に怒りの視線を投げかける。
そんな視線をさらりと躱した桜井は
今まで私たちが何点かのデザイン画について
打ち合わせしたことを朝比奈に報告していく。
なによ。ホントに面白くないったら!
先に打ち合わせができたデザインから着手していき、
後は追々決めて進めていこうと話がまとまった頃。
私はサオリの首元に光るものを見付け、目を剝いた。
桜井もそれに気付き、驚いた表情をしている。
それを贈ったであろう、贈られたであろう本人たちの
口数が、心なしか少ない。
いつもの、朝比奈じゃ、ない。
~~~!なんなの!なんなのよ!
憤怒の形相と化していく私とは裏腹に、
楽しそうな笑顔を浮かべる桜井が段々憎らしく思えてくる。
桜井め。後であんたのお尻撫で上げてやるから!
帰りのタクシーに乗り込む前、
見送りのために出てきてくれていた桜井のお尻を
思いっきり掴んでから撫で上げてやり、
桜井が悲鳴をあげている時に。
同じく見送りに来てくれている朝比奈を思いっきり睨みつけて。
サオリをタクシーに押し込み。
私に睨みつけられて、驚いた表情の彼に
いつもの飄々としたものがないことに。
ああ、桜井の言う通りだと悟った私は完全に打ちのめされた。
「レイ!お前、これセクハラだぞ!八つ当たりだぞ?!」
「バーカ!バーカ!馬鹿桜井っ!!」
打ちのめされて心に余裕がない私は、
子どもっぽい罵声を桜井に浴びせ、
一刻も早くこの場を離れたくて、運転手に行き先を告げ。逃げた。

