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漏らしちゃったの?
第2章 海の秘密

5
最初に気づいたのは、伊倉さんの方だった。
ぼーっとお惣菜を選んでいると、隣に人の気配を感じる。見上げるとにっこりと笑顔を向けられた。
「やっぱり、あの時の子だったか」
さっぱりとした口調で伊倉さんは言う。
わたしもすぐにピンと来て、それで、めちゃくちゃに恥ずかしかった時のことを思い出して、俯いてしまった。
「あ、の、あの時は…………その、すみません、助かりました」
顔が真っ赤になっていくのがわかる。
夏でもないのに、異様な程に体が熱を帯びる。
「いいよ。大したことないって」
さらっとそういう伊倉さんにとって、本当に大したことないように聞こえたから、こっちとしてもちょっと安心した。
やっぱり、仕事で介護してると慣れてるのかな。
「青凪さん、仕事帰り?」
これまたさらっと名前を呼ばれたことに驚きつつ、頷いた。
あの時……首から名札下げてたの、確認されてたんだ。
「あ、はい。……あ」
焦りながら頷いて、気づいてしまった。
伊倉さんのカゴの中と、わたしのカゴの中。
伊倉さんのカゴには、キムチ鍋の素と、野菜とお肉と、恐らく自炊をするであろう食材がたくさん入っているのに、わたしのは……
パックのお惣菜と、カップ麺と、申し訳程度の野菜ジュース。
わたしはそっと伊倉さんの視界に、カゴの中身が入らないように、避けた。
その様子を見て、伊倉さんがくすくすと笑う。
気づかないわけないのだ。だって伊倉さんは、わたしの尿意にさえ気づいて、トイレに連れて行くような人だ。
「……うちに、食べに来る?」
「え?」
突然の提案だった。伊倉さんは笑いながら、でもわたしの表情の変化に合わせて、言葉を繋いだ。
「いや、見たところ、忙しいんだなって。あと、今日鍋にするんだけど、1人では食べきれないと思ってたし。もちろん、青凪さんが良ければだけど」
……不思議と、全く嫌な気持ちがしなかった。
わたし自身、あんな失態を見せながらも、伊倉さんのことが少し気になっていたんだと思う。
ピンチの時に助けてくれる異性というのは、2割増くらいでかっこよく見えるものなんだ。伊倉さんは既に、紛うことなきイケメンだと言うのに。
「良いんであれば……その、お世話になりたいです……」
俯きがちにそう言うと、伊倉さんは嬉しそうに笑った。
最初に気づいたのは、伊倉さんの方だった。
ぼーっとお惣菜を選んでいると、隣に人の気配を感じる。見上げるとにっこりと笑顔を向けられた。
「やっぱり、あの時の子だったか」
さっぱりとした口調で伊倉さんは言う。
わたしもすぐにピンと来て、それで、めちゃくちゃに恥ずかしかった時のことを思い出して、俯いてしまった。
「あ、の、あの時は…………その、すみません、助かりました」
顔が真っ赤になっていくのがわかる。
夏でもないのに、異様な程に体が熱を帯びる。
「いいよ。大したことないって」
さらっとそういう伊倉さんにとって、本当に大したことないように聞こえたから、こっちとしてもちょっと安心した。
やっぱり、仕事で介護してると慣れてるのかな。
「青凪さん、仕事帰り?」
これまたさらっと名前を呼ばれたことに驚きつつ、頷いた。
あの時……首から名札下げてたの、確認されてたんだ。
「あ、はい。……あ」
焦りながら頷いて、気づいてしまった。
伊倉さんのカゴの中と、わたしのカゴの中。
伊倉さんのカゴには、キムチ鍋の素と、野菜とお肉と、恐らく自炊をするであろう食材がたくさん入っているのに、わたしのは……
パックのお惣菜と、カップ麺と、申し訳程度の野菜ジュース。
わたしはそっと伊倉さんの視界に、カゴの中身が入らないように、避けた。
その様子を見て、伊倉さんがくすくすと笑う。
気づかないわけないのだ。だって伊倉さんは、わたしの尿意にさえ気づいて、トイレに連れて行くような人だ。
「……うちに、食べに来る?」
「え?」
突然の提案だった。伊倉さんは笑いながら、でもわたしの表情の変化に合わせて、言葉を繋いだ。
「いや、見たところ、忙しいんだなって。あと、今日鍋にするんだけど、1人では食べきれないと思ってたし。もちろん、青凪さんが良ければだけど」
……不思議と、全く嫌な気持ちがしなかった。
わたし自身、あんな失態を見せながらも、伊倉さんのことが少し気になっていたんだと思う。
ピンチの時に助けてくれる異性というのは、2割増くらいでかっこよく見えるものなんだ。伊倉さんは既に、紛うことなきイケメンだと言うのに。
「良いんであれば……その、お世話になりたいです……」
俯きがちにそう言うと、伊倉さんは嬉しそうに笑った。

