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漏らしちゃったの?
第2章 海の秘密

「あ、西口なんですね」
「そう。青凪さんは東口?」
「はい。……まさか、最寄りが同じだとは」
伊倉さんとわたしは、同じ最寄り駅で、伊倉さんの家は駅を挟んで反対側だった。
こんなに近くに住んでいたなんて。
帰宅ラッシュの駅は混んでいて、人混みの中、頭一つ抜きでた伊倉さんが、すいすいと進んでいく。はぐれないように、後ろをついて歩くと、伊倉さんが何度かわたしのことを振り向く。
「あー……、ごめん、こうさせて」
何度目かの振り向きざま、不意に、空いていた左手を握られた。
「え」
驚いて固まる。……でもやっぱり、悪い気はしなくて。
伊倉さんが笑いかける。
「はぐれそうで」
一度だけ、照れくさそうに頭を搔くと、今度はわたしを連れて、すいすい歩く。
握られた手から、体温が上がっていく。
伊倉さんの横顔を盗み見る。凛とした横顔に、どきっとしている自分が否めない。
握られた手が、徐々に心地よくなっていく。
結局家まで手を繋いでいたのは、お互いがそうしたかったからかもしれない。

