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漏らしちゃったの?
第6章 経過観察
「もう少しだよ」

言いながら、残りの薬を注入していく。
わたしは声にならない声を上げながら、気持ち悪さと恥ずかしさと戦った。
伊倉さんが、しっかりとおしりの穴を見つめて、浣腸を抜き去ると、今度は手早くオムツを履かせた。

「いくらさ……お腹いたい……」

「うん、もうトイレ行こうか」

ズボンを履く余裕もなく、オムツのままで起き上がって、トイレまで手を引かれる。
いつだったか、尿意が差し迫っているときにも、こんなことはあったし、病院での浣腸の時もこうだった。

オムツだけを履いた下半身は、およそ大人の見かけではなくて、顔から火が出るほど恥ずかしかったが、躊躇っている場合でも無かった。
一刻も早くトイレに行かなければ、オムツの中に漏れてしまう。

便座に座った瞬間から、多量の便が凄まじい勢いで出ていく。
力む間、伊倉さんがわたしの手を握っていた。

「お腹痛いね、頑張れ頑張れ」

締め付けられるように痛いお腹を、伊倉さんの大きい手がさすっていく。
安心感から、目の前にあった肩に、顔を埋めて泣いた。

「もうやだよう……痛いことも恥ずかしいことも、したくないよう……」

伊倉さんは大便の状態を確認すると、トイレの水を流す。
グズグズ泣くわたしの頭を撫でると優しい声で言った。

「ごめんね。海のおしっこの病気は、こうしないと治っていかないんだ。今日頑張ったら、また来月までないから、今日だけ我慢しようね」

すっきりと凹んだお腹とは反対に、また来月もある、という絶望感は計り知れない。
とりあえず、今日の治療を乗り越えなきゃいけない……。

憂鬱な気持ちのまま伊倉さんに着替えを手伝ってもらったあと、朝一の診察を受けるために家を出た。


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