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蒼い春
第7章 ほんとうの春


奈央が養護教諭として着任して数ヶ月…

お昼休みに珍しく
幸久先生が保健室にやってきた。


「あら?幸久先生、
どこか具合でも悪いんですか?」

そう尋ねると、
いやいや、そうじゃないんだと
申し訳なさそうにしながら話し始めた。

「いや、実はね…
今度の土曜の夜なんだけどね、
当直当番に当たっていてね」

そう、この学園は
セコムなどのセキュリティを採用せずに、
未だに当直、日直制をしていた。

まあ、手当てはそこそこあるようで、
先生方からもあまり不満の声は出ていなかった。

「ほら、奈央ちゃんも知ってのとおり
今度の土曜はさあ…」

そうだった。
弓子夫妻は月に1度だけ
外食デートをしているのだった。

それが今度の土曜日…

「当直に当たってるのをうっかり忘れてさあ、
お店を予約しちゃったんだよね…でね…」

言いにくそうに
ゴニョゴニョと言葉を濁し始める。

ここまで言われると、
いくら鈍い奈央でもピンときた。

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