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蒼い春
第1章 ロストバージン
街で何人かの人たちとすれ違ったが、
誰一人として
少女が深夜の街を徘徊していることに
不審に思わずに、無視して通り過ぎた。
空が明るくなってきていた。
気づけば奈央は中学校の前に佇んでいた。
閉じられた校門の前にしゃがみこむと
涙がとめどもなく溢れ出した。
空腹の為に、
猛烈な寒けが襲ってきたそのときに
1台の車が校門の前に停車した。
車から降りたのはバレーボール部の顧問で
美術科教諭の月島弓子だった。
バレーボール部の日曜の早朝練習のために
登校してきたのだ。
「誰?…あら、あなたは3組の森下さんよね?
いったいどうしたの日曜のこんな早朝に…」
私服で、膝を抱えて震えている奈央の様子から
尋常でないことは察しがついた。
急いで校門の鍵を開け、
弓子はひとまず奈央を
生活指導の部屋に連れてゆき、
熱いコーヒーを差し出した。
毛布を奈央の肩にかけて
「今は何も言わなくていい…
落ち着いたら話してくれたらいいからね」
そう言って体をやさしく抱きしめてくれた。