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蒼い春
第3章 奈央の就職
月日は流れ、奈央は成人を迎えた。
成人式にはレンタルではあるが
奇麗な振袖で誇らしく成人式に出席した。
自分で買ったリクルートスーツで
かまわないと
何度も辞退したが、
弓子夫妻は一生に一度なのだから
振袖を着なさいと頑として譲らなかった。
「お金なら大丈夫よ。
逃げ去ったあの男から
たんまりと養育費をぶんどったんだから」
ウソだ…
あの男が金など出すなど考えられなかった。
『きっとお母さんだわ』
いつまでも意地を張って
会わないのはどうかと思ったが、
どうしても会いに行くことができなかった。
でも振袖に手を通すときは
『お母さん…ありがとう…』と
心の中で両手を合わせた。
短大を卒業した奈央は、
養護教諭の資格を得た。
だが資格を得たからと言っても
すぐさま保健室の
養護教諭になれるというものでもなかった。
教員採用試験に臨んだものの
1次試験で見事に不合格となってしまった。
早く定職に着いて、
育ててくれた弓子夫妻に恩返しがしたい…