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保険外交員の営業痴態
第10章 帰省
バスの運転手が
かなりのスピードでバスを走らせたので
終点へは一時間も早く到着した。
当然、駅のターミナルには電車も人影もなく
乗客たちはブーブー文句を言いながらも
たった一軒だけ24時間営業しているファミレスに駆け込んだ。
「予定より早く着いたので
バスの車内でゆっくりしてくれてもいいですよ」
運転手の白山が
申し訳なさそうにアナウンスしたが
暖房のよく効いたファミレスがいいと
ほとんどの乗客が店へと向かっていった。
「なあ、俺たちも
コーヒーでも飲みに行かないか?」
隣の座席の男が真由美を誘ったが
真由美は断った。
「なあ、俺、あんたとマジで付き合いたいんだよ」
ここでサヨナラは偲びがたいと
男は名刺に連絡先を書いて
真由美に握らせた。
佐々木竜介…
あら、意外と古風な名前なのね
真由美も仕方なく
メモ用紙に携帯の番号を書いて佐々木に渡した。
「俺、絶対に連絡するから…
俺、マジであんたに惚れたんだよ」
なおも食い下がる佐々木を
真由美は睨んだ
「ご縁があったら、
またどこかでお会いしましょ」
真由美に睨まれて
自分には脈なしかと
佐々木は項垂れてバスを降りた。
真由美は座席のリクライニングを倒して
もう少し寝ちゃおうかなと
寝る体勢に入った。