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短編集 一区間のラブストーリー
第9章 第九話
「もうすぐ平成も終わるな」
枕元のデジタル時計を見つめながら部長の桜井がポツリと呟いた。
昨年の忘年会で酔いつぶれてしまった私を介抱すると言ってホテルに連れ込まれてから
あってはならない関係が続いている。
あの日…泥酔して意識が朦朧としているのをいいことに
ラブホテルで散々に令子の体を弄んだ男。
翌朝、目が覚めて、二日酔いの頭痛の中で自分が見たこともない部屋で
素っ裸でベッドに横たわっていることに気づいた令子は何が何やらわからなかった。
とにかく家へ帰ろうとベッドから起きだそうとすると、
バスルームのドアが開いて桜井が全裸で濡れた体のまま令子の前に現れた。
『私は…この男に抱かれた?』
まったく記憶がなかったが、
起きだした令子の姿を見ると桜井がニヤっと笑ったことで全てを理解した。
「ようやくお目覚めかい?いやぁ~、昨夜の君は激しかったねえ」
「部長!私を…」
立ち上がった令子の肩を押して再びベッドに寝転された。
「まさか君があんなに好き者とは思わなかったよ。
帰りのタクシーの中で俺のちんこを握って離さないんだから…
まったく難儀したよ。おまけにラブホに連れて行けってわめくしさ」
『酔って記憶がないことをいいことにデタラメを言っているんだわ』
桜井のような中年太りの頭髪の薄い男は令子が一番嫌いなタイプだった。
いくら泥酔していたとはいえ、こんな男に言い寄るはずはなかった。
「わめき続けるから仕方なくここへ連れ込んだら
部屋へ入ったとたんいきなりズボンのファスナーを下ろして
ちんこにしゃぶりつんだもんなあ
そこまでされちゃあ、男としてヤルしかないでしょ」
キッと桜井を睨みつけると、
「怒った顔もなかなかキュートじゃないか」
そう言いながら令子にキスをしてきた。