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離島性体験 〜M男君〜
第2章 1986年に5月に起きた悲劇
卓郎はゆっくり歩いていた。細い路地、電柱の影が傾き、誘うように影が倒れて足元を暗く照らす。下を向きながら落ちてるものを数えながら歩いた。

病院から帰ると玄関に1人の女性が立っていた。スーツ姿の先生が待ってた。新任の若い綺麗な女性で生徒にいじられるような少し内弁慶な先生だった。

「どうぞ」

卓郎の低すぎる声、一言だけで空気が凍りついてしまう。玄関をあけると視界には他人に見せるにはあまりにも散らかった光景が目にはいる。

「すみません、散らかってて。」

「うん。」

その言葉を最後に二人は言葉も見つからず片付けを始めた。卓郎は膝をついてアイスクリームのカップを拾い。先生は食器を洗っていた。

「ちゃんと食べてる?」

ふと声をかけた先生の声にまた卓郎の目から涙が落ちる。硬いフローリングの上に涙の滴が落ちて弾いていた。

悲しいとかそういう感情じゃなくて誰かに・・卓郎は誰かに聞きたかった。

「先生、明後日・・・」

卓郎は奥歯を強く噛んで言った。

「僕は両親を・・・両親を・・」

また涙を落として卓郎の顔がしわくちゃに歪んだ。

「・・・・殺すんですか?」


その言葉で沈黙が起きた。空気も時間も音も止まったように感じた。

悔しい、不安、後悔、無念、そういう感情が卓郎の心と脳にダメージを与えていた。


「僕が最後、息を止めるだ。、、、助かる見込みは薄いから。僕の僕の意思で両親の息を止める、、、。」

卓郎は強く吐き捨てるように、その邪気を吐き捨てないと自分の心が壊れてしまう、自分を守るために無意識で言葉を吐き捨てた。


聞き慣れない物音がして卓郎の近くに近づいてくる。その音は短くて早い子供の足音のようだった。気がつくと卓郎は先生の胸の中で抱きしめられていた。

「違うよ。違う。えらい!!卓郎くんは偉いよ。強いよ。強い。正しいし、正直なだけ。ただ優しくて正直だけだよ。」

焦ってるような、早口で熱のある声で先生は卓郎を抱きしめていた。
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