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黒い瞳
第5章 淳子~15歳~

月日は流れ、淳子は綺麗な娘になった。

淳子の成熟が増すにつれ、
母の老いが目立ち始めた。

今や春を売る稼業も閑古鳥が鳴いていた。


「淳子、中学校を卒業したらどうするんだい?」

ある日、母は淳子に問いかけた。

級友たちは、みんな進学するという。

だが、淳子は勉強ができる子ではなかったし、
母に負担をかけたくなかったので
進学する気など毛頭なかった。

少しの金額でも稼いで、苦労してきた母に楽をさせてあげたいと考えていた。

働きたいと母に告げると、

「働く?働くといっても今のご時勢じゃあ、
中卒の女を雇ってくれるとこなどそうそうないわよ」

お金の心配などしなくていいのだから、
進学を考えてみてはどうかと勧められたが、
淳子の思いは変わらなかった。

「常用雇用でなくてもいいの。
パートでもなんでもいい。私、働く」

淳子の意思は固かった。

中学を卒業すると、淳子は近所にあるスーパーのレジ打ちのパートを始めた。

時給は、ほんの小遣い程度であったが、
初給料の袋を母に手渡すと、
ありがとう、ありがとうと何度も喜んでくれた。


その頃から、母は目に見えて痩せてきた。

どこか、体の具合が悪いのなら、
お医者さまに診てもらったほうがいいと何度も勧めたが、
少し疲れているだけだと首を縦に振ろうとはしなかった。


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