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黒い瞳
第5章 淳子~15歳~

やがて顔色もかなり悪くなり、
素人の淳子が見ても黄疸だという症状が出始めた。


ついに本人も辛さに耐えかねて、
医者の診察を受けたのだった。

診察後、母は緊急入院となった。

診察結果は胃がんであった。

診察した医師の話によると、
余命3週間という残酷な告知を受けた。



淳子は、頭の中が真っ白になった。

どうすればいいのだろか?

母には、告知することができなかった。

おかあちゃん、あと、3週間で死んじゃうんだって・・・
そんなこと、口が裂けても言えない・・・

点滴と投薬のおかげで少しは楽になったのか、
母は穏やかな顔をして眠っている。

まだまだ、母に教わらなければならないことが一杯あるのに。

まだまだ、母と語り合いたいのに。

まだまだ、母に親孝行できていないのに。

まだまだ・・・まだまだ・・・・



医者の宣告どおり、
母は入院して3週間後に息を引き取った。

亡くなる5日前から意識は混濁し始め、
ごめんね、ごめんね、と、うわ言を繰り返した。


思えば、母はいつも淳子を抱きしめては、
ごめんねと言っていたっけ・・・


福祉の葬儀は、棺おけも質素で、
読経もなく、位牌もなく、
あまりにもあっけなく荼毘された。


小さな骨壷となった母を抱きしめ、
淳子は涙を流さず心で泣いた。


おかあちゃん、淳子、幸せになるから。

おかあちゃん、淳子、おかあちゃんの娘でよかったよ・・・


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