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黒い瞳
第6章 淳子~18歳~
お給料もトントン拍子に増え、
賃貸ではあるがマンションに住めるようにもなった。
ある夜、
ご新規さんのお客さまの接客をすることになった。
席に着き、
お客様の顔を見て淳子は悲鳴を出しそうになった。
なんと、母が結婚詐欺の被害にあったとき、
犯人に手錠をかけた若い方の刑事だったからだ。
「あれっ?君どこかで前に一度会ったかな?」
刑事は淳子を覚えていた。
いや、正確には母を覚えていたのだ。
それほど、淳子は母の生き写しであったのだ。
「そうかい、あの時の娘さんかい。
それでお母さんはお元気に暮らしているかい?」
あれから必死になって生きてきたこと、
そして母の死などをかいつまんで話した。
「犯人を検挙したものの、 ろくに相談にも乗ってやれず申し訳ないことをした」
そういって刑事は頭を下げた。
「ちょっと、やめてくださいよ。
さあ、頭をおあげください。 こんなとこ、ママさんに見られたら怒られちゃうわ」
「えっ?あっ、そうか。それはすまん」
そういって、また頭を下げた。
「もう、いやだわ。刑事さんったら。うふふ」
「その刑事さんというのはやめてくれないか」
刑事は若林健太と名乗った。
淳子の家で初めて出会ったのが25歳で、
現在37歳だと教えてくれた。
話をするうちに若林はこの度、
仕事上で失敗をしてしまい、
落ち込む気持ちを吹っ切る為に飲みにきたのだと言った。
「しかし、この店を選んで正解だったよ。
あなたのような奇麗な人に出会えたし」
そう言って、水割りをおいしそうに飲んだ。
おかわりを作りながら、綾子と言います。
どうぞ、ご贔屓に。
そう笑顔で言って、グラスをテーブルに置いた。