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黒い瞳
第7章 淳子~19歳~
「淳子、もうすぐだな」
そういって若林は大きく膨れた淳子のお腹をさすった。
「あなた、まだ予定日までは
あと10日もあるのよ」
「10日なんて、あっと言う間じゃないか。
そうだ!俺が非番の日に帝王切開してだしちゃえ。なら、あと3日だ」
「いやだ、なに言ってるのよ。
私たちの初めての子よ、ちゃんと産むわ」
「ああもう、早く生まれてくれよ。俺の息子」
「娘かもしれないわよ」
二人で相談して、生まれてくる子の性別は、
産婦人科の先生に聞かないことにしていた。
『でも、この子は女の子・・・』
淳子には確信があった。
エコーで見たわが子の影には男のシンボルがなかったような気がしていたからだ。
『この子は女の子・・・かわいい、かわいい私たちの娘・・・』
しかし、若林は男の子だと信じて疑わなかった。
ベビー服も、おもちゃも、男の子用を用意していた。
『ふふふ・・おバカなパパさんですこと』
「なあなあ、名前・・・ 俺たちの一文字を取って「淳太」ってやっぱり変かなあ?」
「いいわよ。男の子ならね。
でも、女の子なら私が決めるわよ」
「ああいいさ。絶対に男に決まってるさ。
なあ、淳太」
そう言ってまたお腹をさすった。
「おっ!今、蹴ったよな?」
「そうね。私は女よバカなパパさんって言ったのよ。うふふ」
淳子は、女の子なら母、由江から一文字もらい
由紀子にしようと決めていた。