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黒い瞳
第7章 淳子~19歳~
それは、梅雨の中休みと言うべきか、
昨夜からのシトシトと降っていった雨があがり
久しぶりの太陽が顔をのぞかせていた。
しかし、梅雨時期独特の湿った空気が体にまとわりつき、 じっとりと汗ばむ昼下がりであった。
さて、夕飯の買い物にでかけるか。
テレビは朝から人質立てこもりのニュースでもちきりだった。
『健太が朝早くから呼び出されたのは、この事件ね』
だとしたら、解決するまで健太は帰って来ないかもしれない。
夕飯の支度、難しいなあ。
淳子の分だけでいいのか、
それとも早く解決した場合は二人分必要だし・・・
迷っているうちにお腹に痛みを感じた。
『イタタ・・あれっ?これって・・陣痛?』
いざというときの為に、
入院出産の準備は整えてある。
「初産だし、不安・・・やっぱりお義母さまに来ていただこう」
電話をすると、 嬉しそうに
「そう。ようやくきたのね。 大丈夫。すぐいってあげるわ」
そういってくれた。
義母が到着するころには陣痛が規則ただしく襲うようになっていた。
「まあ大変。さあいそぎましょう」
タクシーで病院へ行くと、
すぐさま分娩室に入った。
一方、健太達警察と人質立てこもり犯との睨み合いは続いていた。
「課長!俺が先陣を切ります!」
立てこもり12時間・・・
犯人は苛立ち、人質の女性も体力的にきつくなりつつあった。
犯人の要求どおり食事を用意させた。
その出前もちに変装し突入を試みることとなった。
その大役を若林が買って出たのだ。
「奴は拳銃を所持している。
防弾チョッキを着用すること! そして、くれぐれも無理はするな。いいか!」
指揮をとる管理官の目も
緊張と疲労からか真っ赤に充血していた。
「はいっ!」
健太は同僚から防弾チョッキを受け取ると
慎重に装着した。