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黒い瞳
第8章 淳子~20歳~
若林がこの世を去って、
義父母はすっかり老け込んでしまった。
寝込む日も多くなり、
4ヶ月後に義父が心不全で亡くなり、
さらにその2ヶ月後には
後を追うように義母が脳溢血でこの世を去った。
新しい1つの生命の誕生と3つの命の終わり・・・
なんと波乱の1年。
淳子の心の支えは由紀子の笑顔と、
義父母の看護に尽くしてくれた看護師の
佐々木順平の存在であった。
佐々木は事あるごとに、
淳子を食事に誘ったり、
由紀子の喜ぶおもちゃをプレゼントしたりしてくれた。
淳子は次第に佐々木に思いを寄せていった。
『健太が亡くなり1年にも満たないと言うのに・・・』
淳子は自分の心を否定しようとしたが、
佐々木の澄んだ瞳に見つめられると、
頬を染め、ときめいてしまうのだった。
そして、何度目かの食事を共にした時のことであった。
「若林さんは、僕のことを、どう思われていますか?」
唐突に佐々木が淳子に問いかけてきた。