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短編 出張の一夜
第1章 旅館にチェックイン
「宮間君、今日の企業さん、どう思う?」
駅のコインロッカーに預けておいたキャリアバッグを取り出しながら
桧山佳祐は部下の宮間藍子に尋ねた。
「どうでしょうか…こちらのお話は真剣に聞いていただけましたが、今ひとつ乗り気ではなかったような…」
「君もそう感じたかね、厳しいものがあるよね」
桧山は意見が一致したことで少々気をよくしながら 「はい、君のバッグ」と取り出したキャリアバッグを藍子に手渡した。
二人は某企業の営業部である。
新規開拓のため、とある街へ出張を命じられてきたという訳である。
成果が上がりそうにない出張に
二人の足取りも自然と足が重くなる。
唯一の楽しみは今夜の宿か…
総務部の木下が手配してくれた宿は
ビジネスホテルではなく
温泉旅館だと教えてくれた。
『厳しい出張だと会社もわかってくれたのだろうか…』
しっかり鋭気を養って、明日、もう一度アタックだ!
いい宿に宿泊させてもらって成果なしでしたでは 会社に申し訳がたたない。
「足、疲れたろう?」
ヒールの靴で散々歩き回ったのだ。
きっと疲れているに違いなかった。
「大丈夫です。少しきつかったですけど、
温泉に浸かれば疲れも吹っ飛ぶと思います」
藍子も温泉旅館ということで
楽しみにしているようだった。