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短編 出張の一夜
第1章 旅館にチェックイン
「宿に着いたら明日のために
ミーティングをやろう
しっかりと明日の戦略を練って、
準備を整えたら温泉で一風呂浴びよう。
ONとOFFの切り替えも大事だしな」
「はい」
彼女にしてみれば、今回が初出張だ。
かなり緊張しているようだが、
よくがんばっている。
まだまだ新人の域を脱していないが、
彼女は営業職に向いている。
売り込みアピールの切り口も斬新だ。
今回の出張が決まった時、
桧山は真っ先にパートナーを彼女にしようと決めた。
グーグルマップを頼りに、
二人は今夜の宿泊先である旅館にたどり着いた。
想像していた以上に古めかしい旅館だった。
まあ、こんな旅館も
わびさびがあって風情があるってもんだ。
とにかく二人は疲れていた。
早く靴を脱いで畳の上でゴロンと横になりたかった。
「すいません」
玄関で声をかけると
「はあ~い」という間延びした声が返ってきて仲居さんが現れた。
「すいません、予約しておいた○○会社の者ですが」
「はいはい、承っております。
桧山様でございますね ようこそお越しくださいました」
では、宿帳に記帳をお願いいたしますと宿泊カードを差し出した。
桧山がサインして藍子にペンを渡した。
カードをもう一枚お願いしますと告げた藍子に
仲居さんは「奥様は連名で同じカードにお願いいたします」と言った。