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いろはにほへと~色は匂えど~
第1章 浪人 策ノ進
江戸幕府が開設され、
徳川家により日の本の国は平穏な時代となった。
幕藩体制がしっかり整われたことにより、
石高(こくだか)の少ない藩は武芸の鍛錬よりも
参勤交代の準備に明け暮れる日々であった。
ここ大坂でも冬の陣、夏の陣と
たいそうな争いがあったことなど夢のように
平穏が訪れていた。
大坂は商人の町として知られるようになったが
河内の山の麓では商いよりも未だ農家が多く、
ほとんどの民は田畑を耕して暮らしておった。
そんな小さな山村に
ある日、浪人がやって来た。
侍の名は「是永 策ノ進(これなが さくのしん)」と言った。
策ノ進は腕の立つ侍であったが、
藩の剣術大会で家老の跡取り息子を
こてんぱんに打ちのめしてしまったものだから
城内でたいそう立場が悪くなり、
やがてここには自分の居場所がないのだと悟り、
脱藩して放浪の旅に出たのだった。