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いろはにほへと~色は匂えど~
第4章 月謝は体で
翌日の寺子屋講義では
次郎太の顔をまともに見ることが出来なかった。
拙者はそなたの母親と密通したのじゃ
心根にはそんなやましさが渦巻いていた。
年端もゆかない子供達の目は誤魔化せても
年長でおぼこを卒業したお吉だけは
不審な眼差しで策ノ進を見つめていた。
「先生様、かな手本してや。
これでおおてるか?」
お吉が半紙に
辿々しい文字で書き綴ったものを見せてきた。
「どれどれ、添削してしんぜよう」
受け取った半紙の文字を見て策ノ進は慌てた。
『あんたじろうたのははおやとおめこしたんか』
「こ、これは…」
策ノ進はお吉の顔を見つめた。
「どないやの?それでおおてるか?」
「くだらん詮索はよせ」
策ノ進は添削用の朱墨汁で
文字が読めなくなるほど真っ赤に塗りたくった。
「噓やというんなら、
今夜は二発、しっかり精を出してや」
お吉はアッカンベエをして
自分の席に戻っていった。
おお怖いこわい…
まこと女の勘というものは凄まじい。
まあ、納得するほど今宵は極楽へ逝かせてやろう。
策ノ進は心の中でお吉に詫びた。