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いろはにほへと~色は匂えど~
第7章 婚礼
「言うことを聞けや!」
与作はお民を地べたに
這いつくばらそうと
ドンッとお民の胸を押した。
興奮しているせいでその力は半端なく強く、
押されたお民は予想以上に吹っ飛んだ。
だが、転がる先は崖なのだった。
足をよろけさせたお民はどうすることも出来ず
「あっ…」と短い声を発して谷底へ落下した。
「お民ちゃん!!」
与作はおそるおそる谷底を覗いてみた。
手足があらぬ方向に曲がり、
踏みつぶされた虫けらのような姿で
お民は血だらけになっていた。
「えらいこっちゃ!人殺しは首縊りの刑や…
わし、首を吊られて死にとうない!」
与作は谷底のお民の死体に向かって
崖を跳躍した。
お民と与作の骸が見つかったのは
祝言当日の事であった。
早朝に鮎釣りに訪れた漁夫が
河原で寄り添うように倒れている二つの死体を見つけた。