この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
いろはにほへと~色は匂えど~
第9章 お吉を奪い返す
「天晴れ(あっぱれ)見事である!」
殿は褒め称えたが
藩士達は静まりかえったままだった。
確かに策ノ進の腕前は見事であったが、
よもや城下の浪人ごときが
武道の頂点に立ったのだから面白くはなかった。
「そなたの素性がどうあれ、
勝者には武芸道場の師範として雇い入れる」
この上ない殿からのお達しであるが、
策ノ進は丁重に断った。
「何故じゃ?晴れて藩士と反りさけるのだぞ?」
「殿様のお言葉、身に余る光栄にござる…
しかし、拙者のような身分では
誰も道場に来てはいただけまい…
ましてや師範としての求道心も
芽ばえることはござらん」
策ノ進の言葉ももっともであった。
現に藩士達には
恨みと妬みの表情が浮かんでいたのだ。
「わしとしてはそなたの腕前が欲しいのだが…
わかった。代わりの褒美をつかわそう…
何なりと申してみよ」
この言葉を策ノ進は待っていた。