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蜜と獄 〜甘く壊して〜
第1章 【業界未経験の需要】
出口のないトンネルを長い間宛もなく歩いていたように思う。
上手く息継ぎ出来なくて呼吸の仕方を忘れかけていた。
何もかもどうでも良くなっていた頃だ。
“俺の店に来ないか?”
堤さんと出逢ったのは。
私の瞳を見て、何色にも染まらない唯一無二の女に仕上がると見抜いたらしい。
頑なに拒み続けてもあなたは諦めなかった。
来る日も来る日も雨であろうが嵐であろうが目の前に現れた。
“男の射精を手伝う仕事だ、チンポ擦ってやれば金になる、脱がなくて良いし本番なんてねぇよ、非現実だろ?お前ならNo.1も夢じゃない”
やってみるか?の一言にどうしてあの時頷いてしまったのだろう。
それは今でも確かな答えがわからない。
変わりたかったから?
No.1というフレーズに魅力を感じた?
非現実なら溺れてみたいと思ったのだろうか。
「何考えてる…?本当、頼むから俺に溺れてくれよ……こんなに独占したい女初めてなんだ」
昨日のドレスを身に纏い、行かせないとばかりに後ろから抱き締められている。
「どうしたらお前手に入れられんだ?リリカ辞めたいなら辞めて俺のとこ来いよ」
「いいえ、辞めたいとは思いません……やっと手に入れた非現実ですから」
ギュッと抱き締める手に力がこもる。
首筋に這う唇。
「あっ……やめてください、もう真っ赤…」
「次の出勤日はスカーフ巻けよ」
ジャケットを羽織らされ「送る」と言って聞かなかった。
そして、その日から時間が空けば私の家に来ては執拗に抱きに来る。
そのまま出勤させられる事もあった。
「堪んねぇよ、何色にも染まらないお前が俺にイかされてる姿……ココはもう俺の形に馴染んできたか?」
毎晩のように騎乗位で愛でられて壊れるまでイキ狂う。
「狭いな、このベット」
ダブルサイズでそんな事言わないでよ。
そっちはキングサイズなのでしょうね。
だから俺のところに来いよなんてその手には乗りません。
「お前今日の最後の客、延長させれたのにさせなかったな?駆け引きは上手なはずだろ」
「別に……疲れてただけ」
誰のせいだと思ってるのよ。
精一杯の反抗で背を向けたのにやっぱり離してはくれない。