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蜜と獄 〜甘く壊して〜
第5章 【絶頂地獄の成れの果て】
「またイクのか?しょうがねぇな、ほらイケよ」
「あぁっ…もうダメぇ…っ」
堤さんが果てたのはもうすっかり朝日が登った後で、朝から失神寸前まで抱かれてしまったのだ。
その気怠ささえ愛おしいなんて、よほど重症らしい。
キスしたらチクチク当たる髭も、
寝起きの時だけ左瞼が奥二重になるのも、
少しだけ長くなった襟足も全部が尊く感じてしまう。
もう言われなくなったけど、
もしまた「一緒に暮らそう」と言われたら今度は素直に頷いてしまうかも知れない。
私からは決して口にする事はないけれど。
この手に抱かれて居るのなら何も恐れる必要はないと心が麻痺していた。
崩れ落ちるのは簡単で、幸福と絶望は紙一重、常に背中合わせだということにもっと早く気付くべきだったの。
狂い始めた歯車が元に戻ることはない。
溢れた水がグラスに戻ることはないように。
No.1に登りつめた果ての世界。
謳歌する間もなく引きずり落とされる。
それが勝負の世界。
ネットに書き込まれた。
“No.1リリカの正体”
“とんでもない名家のお嬢様だった”
“仮面風俗嬢の経歴”
“実は○○○だった”
○○○の部分は敢えて伏せてあったがネットでは推理合戦に火が付いている状態。
「突き止められていない状態だから様子見…だな、ネットまで書き込まれるって人気な証拠だぞ」
堤さんはそう言っていたけどオーナーに呼び出されていたのは知っている。
警察に被害届と厳重な送迎が付いた。
直接言われた訳じゃないけれど、もっと酷い書き込みや身バレするような記事があったのかも知れない。
そしてそれは当然、キャスト間にも広がっていて。
入店1年目で指名、売上ともに1位な事を妬むキャストが数名。
「仮面被っててNo.1?もしかして客と寝た?本番やったんじゃない?」
「あぁ、堤マネージャーのお気に入りか」
「他店の子が客取られた〜て嘆いてた」
「お嬢さんのくせに出しゃばって好奇心だけでこの世界入ってこないで欲しい」
大丈夫、まだ身バレしてない。
でも時間の問題かも。
一体誰が流したのかわからないけど警戒して過ごすだけの自柄ではある。