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蜜と獄 〜甘く壊して〜
第5章 【絶頂地獄の成れの果て】





廊下で他のキャストとすれ違う時も
「○○さんと寝たんでしょ?」ってお客様個人の名前まで出して嫌味を言われる始末。
相手にしない方が賢明だと聴こえないフリをしてやり過ごす。




後で堤さんが他のキャスト全員に事実無根だと一蹴したと聞いた。




「大丈夫ですか?噂なんかに負けないでください」とトモチンに励まされる。
強気に出るしかないって思ってるし、それでも指名してくれるお客様にいつも通りの接客をしなければ…と自分を鼓舞した。




「あと、ちょっと聞いた話なんですけど…」とトモチンが声のトーンを落として話してくれる。




前の新規のトモヤと名乗ったお客様、やっぱり他店の風俗嬢からのガサ入れだったらしく、その風俗嬢とうちのキャストが繋がってるみたいで。
でも私にクレーム入れるどころか絆されてそのトモヤって子、使い物にならなかったって話してたのをたまたま聞いてた人が居たんだって。




今度はもっと卑怯な手を使ってくるかも知れない。
誰がどこまで知っているのか。




そうか、そうやって恐怖に陥れて仕事出来なくさせる魂胆なのかも。
勿論、身バレはしてはいけない。
大多数に迷惑と名誉毀損を与える。
潮時なのか……迷惑がかかる前に退くべきか。




「リリカさん?お時間です」




呼びに来たボーイさんの声でハッとする。
凄いですね、ひきりなしに指名かかってますよ…って違う。
皆、物珍しさが相まっての相乗効果だ。




暫くは常連様が続く。
大丈夫、私はリリカ。
今はリリカになりきる。
一寸の狂いもなく全うしてやる。




「リリカちゃんって家元のお嬢様なんでしょ?顔出し出来ないのそれが理由とかめちゃくちゃそそるよ」




「えっ…!?」




動揺するな。
きっとネットにばら撒かれた嘘の記事だ。
事実無根だと跳ね返さなければ。




「まさか!ウケますね、それ……え?信じてたんですか?全くのウソですよ?誰が流したのかわからないけど私としては逆に有り難い噂ですけどね」




仮面していて良かったと心底思った。




ホームページ上でもその件は触れていてご心配をお掛けしたお詫びと全くの無関係である訂正文を掲載している。
火消しは出来たものだと思っていた。









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