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Kiss Again and Again
第8章 それから

 そんなに寒い日ではないのに ずっと外にいると凍えてくる。
 ひとつのベンチを選ぶと 海は 持っていた紙袋から 魔法のように プラスチックのグラスとハーフボトルのシャンペンを取り出した。
 「もって」
 わたしが持つ二つのグラスに スクリューキャップをあけ シャンパンを注ぐ。 底の方から きらめき昇る小さな泡粒が 冷気に触れては 静かにはじける。
 「メリークリスマス」
 グラスを軽くぶつけた。 プラスチックでは 鈍い音しかしない。
 「メリークリスマス」
 それでも 極上の時間。
 「こっちむいて」
 海は アクアマリンのイアリングをつけてくれた。 完璧な恋人からの 完璧なプレゼント。 夏色のオーシャンブルー アクアマリン。
 わたしも プレゼントの包み紙を破り 海の首に カシミアのマフラーをかけた。
 「あなたに 首ったけ」 稚拙な恋人もどき。
 もう一度グラスを合わせ キスした。

 こんなに幸せだったら それでいい。


 予約なしでも入れるお店で 前菜みたいな料理とワインで おしゃべりした。 海は いつものように朗らかで 声をたてて笑う。 楽しい時間だけど 開けたままのフランス窓の近くの席だったので すっかり身体が冷え切って ワインの力を借りても 限界だった。

 「あゆ? 寒い?」
 「そろそろ 暖かいところに移動しませんか?」

 情けないことに 声が震え 鼻水まででてきた。

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