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Kiss Again and Again
第8章 それから

 バスタブにお湯を溜めにいくと 用意してあるバスローブにも それぞれ真紅のバラがおいてある。
 せっかくの海の心遣いなのに なかなか心まで温まらない。 

 冷たい色のアクアマリン・・・ 今 わたしの耳で輝いている。
 そのせいかもしれない。

 コートを着たまま バスタブの縁に腰掛け バラの花びらをちぎって お湯に投げ入れた。 真紅の小舟が 狂ったように お湯の上で 舞う。 
 部屋にもどり 枕の上のバラを手にとり
 「お花まで用意して。 ありがとうございます」
 その2本のバラも 湯船に散らした。

 「せっかくだから 映画のヒロインのように バラ湯を楽しみましょう?」

 熱めのお湯に 海の腕の中に包まれ沈みながら ふたりでバラ湯を楽しんだ。
 「もっと 香るものかと思っていたけど そうでもないのね。 でも ゴージャス」
 「よかった。 あゆがよろこんでくれて」

 海は わたしが バラの花びらを摘み取る様子を バスルームのドアのところから もの憂気にみつめていた。 わたしの悲しみが 伝わったかのようだった。 

 今は 安心して 静かに欲情している。

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