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Kiss Again and Again
第9章 高梨さん

 抱きつくかわりに着物の袖を掴むと その手を握り 
 「会場を 見てみるか?」
 手をつないだままエレベーターに乗り 展示会場に行った。 お昼前のせいか 人はまばらだ。

 「ここ うちらのコーナーや」

 出来合いの呉服屋、というかんじで 置き敷かれた畳の上に着物や帯が展示されている。 一番目立つところに見事な紅色の振袖が 大きく広げて展示されている。

 「この色 みてみぃ。 見事やろ。 この色造りにボクも参加したんやで」
 「この色を2年後に流行らせるために これから画策していくんや」
 それから 高梨さんの仕事のことなんか少し聞いた。

 「なぁ 着物 着てみぃへんか?」
 嬉しくて ぼんやりしているせいか 言われていることがよくわからないけど にこにこしながら頷いた。

 高梨さんは 大きな姿身の前にわたしを立たせると 鮮やかな反物を しゅるしゅると広げてはわたしの肩にかけては落とす。 何反かの巻きでそれを繰り返した後
 「愛美ちゃんは 赤やな」
 そう言うと ひとつを選び 他のものは慣れた手つきで巻き始めた。
 足元に広がる絹の海は 谷崎潤一郎の世界だった。 高梨さんは 京都が似合う。
 こんなに着物が似合う男に 東京はもったいない。

 今日は 明るめの紺地にグレイの格子が入ったシンプルなワンピースを着ていた。 
 高梨さんは 洗濯バサミと何本かの腰紐を使って 簡単な着物を作り上げた。
 わたしの肩越しに 姿鏡を見ながら
 「よお似合うなぁ。 おひいさんみたいや」

 わたしは 自分の簡易和装姿より 高梨さんの顔を見ていた。 切れ長の一重の目が 今日は二重になっている。 疲れているのか。 着物姿でわからないけど 痩せたのかもしれない。

 「ええ匂いやなぁ。 なんの香水?」
 わざと耳に息がかかるように 言う。
 「シャネルのチャンス」
 「おしゃれ してきてくれたんや」

 ひっ捕まえて うちに連れ帰って飼ってしまいたいほど愛おしい。

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