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Kiss Again and Again
第9章 高梨さん

「涼矢 お客さん?」

 声の主は 涼やかに白大島を着こなす夫人だった。 あんまりそっくりだから 笑ってしまう。 その後ろには わたしと同い年くらいか 少し年下の女性が立っている。 高梨さんのお母さんと 誰? 二人とは似ていない。 ちょっといかつい感じの真面目そうな女の子が恥ずかしそうに立っている。

 「大学のときの友達や」
 わたしから身体を離さず 畳んだ帯を胸の下あたりにあてがいながら 美しいゲイ友は言う。
 「まあ かわいらし。 赤がよお似合うて」

  いつまでも離れようとしない高梨さんから 一歩踏み出し お母さんの方へ向き直り
 「仲村と申します。 今日は少しお邪魔させていただいております」 と頭を下げた。

 「涼矢の母です。 こっちは娘の和です」

 「社長。 当分 暇そうやから 愛美ちゃんと食事してくるわ」

 えっ・・・ いいの? お昼には まだ早いんだけど。

 「まだ 早いやろ」
 「早い方が 混んでのうてええ」
 「愛美ちゃん、っていいはるの?」
 「はい。 高梨さんとは同じサークルで お世話になりました」
 「ボクはお世話していません。 お世話してもろた方や」

 「なあ 涼矢 あの着物 着てもろうて 食事してきたらええ」
 高梨さんのお母さんの秀麗な顎が 誇らしげに広げて飾ってある紅色の振袖を指す。

 「えっ?」
 「えっ?」
 ふたりで 声をそろえて驚いた。
 「仲村さん 細そうやから 今着てはるワンピースの上から着たら ちょうどええ」
 「ええけど・・・」
 高梨さんが わたしを見ながら 「どうする?」

 「えっ・・・ どーしよう?」

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