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Kiss Again and Again
第10章 裏切り

 しばらく自分の身体を抱きしめ 震えがおさまった頃 立ち上がろうとした。

 立てない・・・

 何度も 試みるけど 立てなかった。


 這って 寝室を抜け出し リビングのソファにつかまった。

 そこには 読みかけの本が伏せてあり パソコンの周りには お祭り騒ぎの後のように資料が投げ散らかっている。 テーブルの上のふたつのマグカップからは まだ湯気が上がっている。

 泣きながら ソファにつかまって立ち上がろうとするのに 何度も失敗する。 手足さえわたしを裏切り 力が入らない。

 はやく・・・ はやく・・・ ここを出なくては。

 バッグを掴み 壁づたいに進んだ。
 揃えておいたはずの靴が 投げ出されたように乱れている。
 車の鍵が なくなっている。 

 老婆のような用心深さで のろのろと歩いた。
 集合ポストに鍵を落とし 震える指で 海に ラインでそれを伝えた。

 建物の外は 呆れるほど爽やかな風が吹いている。

 泣きながら 迷いながら 駅に着いた。

 ここから近いのは 純子ちゃんの家だ。 自分のマンションに帰るわけにはいかない。

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