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Kiss Again and Again
第15章 クリスマス後

 樹さんと過ごした時間は 甘くて心地く満たされるものなのに 時間がたつと 途端に不安が膨らみ始める。 樹さんから離れたわたしの日常生活は その不安を大きくしないよう閉じ込め 鍵を掛けることで動いてゆく。
 蜘蛛の巣に囚われた蝶やトンボは 抗って羽根を動かすのを止めた途端に 別なものになる。 もう蝶でもトンボでもなくなってしまう。

 紛れもなく冬が近づき 人々は 襟をかき合せ 防寒にいそしむ。
 また クリスマスの季節になる。

 クリスマスは 一年で一番嫌い。

 街は 様々な志向で飾り立てられ お楽しみへと心がいざなわれる。


 クリスマスは ケーキ屋さんには 一年で最も忙しい時期だ。

 「あゆちゃん 時間が取れそうにない。 ごめんね」
 「まさかっ。 そんなこと思っていません。 忙しくない時にでも また 時間を作ってください」

 イブも当日も 本命様用だったクリスマスを過ごしたことがあるわたしには そんなこと 何でもありません。

 「25日の夜だったら 時間があるかも」
 「でも その前は 毎日 ほぼ徹夜でしょう? そんな無理してクリスマスをしなくても。 他の人たちのクリスマスのお世話を散々した後なのに。 わたし クリスマスにこだわりはないので」
 「僕には ある。 過去のクリスマスの上書きをしなくっちゃいけないから」

 過去のクリスマス? そんなもの 忘れたいだけ。


 冷たいブルーのアクアマリンのイアリングは クローゼットの奥にしまいこんだままだ。 なぜか捨てられない。 あれほど惨めな想いをさせたイアリングなのに 二度と見ることも、身に着けることもないだろうに なぜか捨てられない。

 海という男を 確かに愛した 愚かなわたしの勲章。


 23日やイブに較べると 25日は 不思議なくらい街は落ち着き 人通りも少なくなる。
 樹さんのお店も クリスマスデコレーションは取り払われ 以前来たときの様相になっていた。 みんなの大好きなイベントが終わる。

 大学は 冬休みになっていた。
 家庭教師をしているお嬢さんは 冬季講習に通うということなので わたしは冬休みは 交通機関が混み合わないうちに 実家に帰るつもりでいた。

 一年で二番目に嫌いなお正月は 実家で家族と過ごす。

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