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Kiss Again and Again
第15章 クリスマス後

 こんなに無理をしなくても わたしは充分に幸せなんだけど それをどうやって伝えればいいのかがわからない。
 シャンパンを一息で飲み干し 口の中から取り出したリングを 小指にはめた。
 「とっても素敵。 ありがとうございます」
 「サイズ1なんて お取り寄せだったんだよ。 間に合ってよかった」

 わたしは樹さんの顔のいたるところに ゆっくりキスをした。 目の上、 鼻先、 頬、 耳たぶ、 唇。 キスをするたび「ありがとう」と言った。 
 「今までで 一番素敵なクリスマスです」

 樹さんがシャンパンを飲んでいるのは 今日も帰宅しないか 遅くなるためだ。

 ほのかちゃんが あの日 樹さんからもらって帰った梨のタルトは たまたま訪ねて来ていた叔父さんに好評で 新年の祝賀会の手土産用にしたいと まとまった数のオーダーが入っていた。

 「あのタルト生地には 私にはわからなかったんだけど 黒糖が使ってあったみたいで 沖縄が長かった叔父さんが 食べてみて 感激しちゃって」

 あの時 樹さんが言っていたように まだ試作の段階で どの梨を使うかを決めかねているらしい。 そのため クリスマスが終わると タルト作りの忙しさに切り替わるのだ。

 「樹さん、って 天才だね。 いかめしくて文句言いの叔父を タルトで仕留めてしまうなんて」
 ほのかちゃんが言う。 わたしもそう思う。 この天才くんは いつか ここからいなくなってしまうのだろう、と。

 キャンドルの灯りに照らされた厨房で 一時間ほど穏やかなパーティーをした。

 ひとりでタクシーを拾えるから、と言うのに 樹さんはセーター姿で通りまで送ってくれた。
 タクシーに乗り込むわたしに
 「こんなクリスマスでごめんね。 またデートしよう」
 閉まったドアのウィンドウが息で曇るくらい近づいて 不安を押し込めるために笑いながら 手を振った。

 あなたが 「また」と言うたび それがいつなのか 怖くなるのよ。 永遠にこない「また」なのではないかと 怖くなる。 小指には ハートのピンキーリングが光っているというのに。

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