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第19章 恋愛事情

　「映画を観てたの？」
　「・・・はい。　ネットで『めぐり逢い』を借りたから」
　「あの　古い映画？　高梨とあゆは　映画の趣味が同じだったよね」
　急に　高梨さんの名前が出て　びっくり。
　「男が　寝室で絵を見つけて　一瞬で　すべてを許してしまうなんて　いいよね」

　すべてを許して？

　また　ラブチェアからお布団を出して敷いた。


　「これ　色々お世話になったから　お礼にと思って　買っておいたんです。　パーカーを着て寝るより　Ｙシャツの方が　マシじゃあないですか？」
　ネットで頼んでおいたＹシャツ３枚は　既に届いていた。　届いたものの　どうやって渡すつもりだったのかと　自分を笑った。

　「僕に？」
　「この前の時に　ブランドとサイズを確認しておいたから　多分大丈夫だと思います」
　「僕に？」
　「沢山よくしていただいたのに　こんなお礼で　ささやかすぎて恥ずかしいけど」
　「僕に？」
　「そうです」

　いきなり　抱きしめられた。

　「すきだ・・・」
　「これ以上すると　その格好で　追い出します」
　「もう・・・ちょっとだけ・・・　もうちょっと　こうしていさせて」
　「いいえ。　はなして」
　「あゆ・・・　おねがい・・・　ちょっとだけ　こうしていさせて」
　「でも　苦しくて　息ができない」
　「なんて細いんだろう・・・　折れそう・・・」
　「本当に　折れちゃう。　はなして」

　こんな風に　何度　抱きしめられただろう。


　「僕を　捨てないで。　僕を　許して」


　こんな海は　知らない。　
　知ろうとしていなかったの？