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第19章 恋愛事情

　「ふーーーん。　まだ続いているんだ」

　続いているけど・・・　それが？

　「高梨とあゆって　本当に不思議だった。　ただ隣り合って座っているだけなのに　ぴったりくっついているように見えるんだ」

　そうね。　右手と左手だから。

　「それが・・・くっついている、というか　重なり合っているというか。　身体の関係があるわけじゃあないのに。　でも　それは後からわかったことだし　それを知らなければ　あれじゃあ　身体の関係がないなんて思えない」

　そんな風に思っていたんだ。

　「どうすれば　あれを越えることができるのだろうか、って　いつも思っていた」

　それなのに　高梨さんが上京したとき　わたしが会いにゆくのを　「そうか」のひと言で送り出したの？

　「ふーーーん。　海は　わたしと高梨さんは　肉体関係があると思っていたんだ」
　「あゆが　肉体関係、なんていうと　ヘンな感じ」
　海は　笑った。　無邪気で幼くみえる。
　「僕だけじゃあなく　他の人達のほとんどが思っていたんじゃあないかな。　いつもふたりの世界をつくっていたから」

　そうなんだ・・・　あの居心地のよい関係は　ふたりの世界だったんだ。　そんな虚構と　あなたは競り合っていたの？


　ほんとうに　知らないことばかり。