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Kiss Again and Again
第19章 恋愛事情

 待っただけのことがある素晴らしい渓谷だった。

 たおやかな水音をさせている細い川の両岸に 真紅の紅葉が重なり合い 連らなっていた。 柔らかくうねり 人々を上流へといざなう。 都内より低い気温に 両手をポケットに入れたまま わたしたちも人の流れに合わせ ゆっくり歩いた。

 わたしは まったく罪の意識もなく 隣にいるのが樹さんだったら 「あゆちゃんの手は いつも冷たいから」と 繋いだ手を自分のポケットに入れるかもしれない、とか考えていた。 そして・・・

 そのとき 気がついた。 そっかぁ・・・ 海も こんな風だったのかもしれない。 誰かといる時に 他の誰かと一緒に過ごしているのを想像したり 他の誰かとの会話を想定したり・・・ こんな風だったのかもしれない。 罪の意識とか 後ろ暗いとか感じたりせず。 そんなことできるはずがない、と思っていたけど 特別なことではないのかもしれない。

 「どうしたの?」
 こんなに美しい人だからといって 特別じゃあなかったんだ。
 「とってもきれい。 連れてきてくださって ありがとうございます」

 ・・・同じことを 樹さんにも言った。 そんなことを考えているわたしが ひどい女ではないのだとしたら 海だって ひどい男ではないのかもしれない。

 あんな寂しげな部屋に住んで あなたは 何かを償おうとしていたの?


 「こんなに綺麗な時期は 短いのだろうな」
 「紅葉は 冬の間も 紅いままなんですよ」

 半歩後ろを 並んで歩いた。 結構長い時間を 散策して過ごした。 海が 手を繋ぎたがっているのは伝わってきたけど そんなことをするつもりはなかった。 わたしは 頑なにポケットに両手を入れたまま歩いた。

 昼食も 黙ったまま海が連れて行ってくれたところに入った。

 「ここは わたしに払わせてください」
 「あゆは そういうこと結構気にするよね」
 「高速代だって ガソリン代だってあるでしょう? そうさせてください」
 「僕の方が 高給取りだよ」
 「それは関係ありません」


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