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Kiss Again and Again
第20章 初 冬

 海の導きで辿り着いたのは 湖畔のレストランだった。 白樺の隙間に建っている小さな北欧風のお店。
 「元同僚がやっているんだ」

 車を降りると 新鮮な空気の中 パンの焼き上がる匂いがたちこめている。 駐車場の隅には 枯れ葉が掃き寄せられ こんもりと山を作っている。 わたしたちの車以外は 一台 軽のバンが停まっているだけだ。

 扉を開けると 白いコックコートを着た男の人が テーブルを拭いていた。

 今でも 白いコックコートをみると 一瞬 心臓が堅くなる。 時間が止まる。

 「きたよ」
 「やっ・・・ 立花・・・ 驚いたなぁ」
 「久しぶり。 元気そうだな」

 海にも こんな口のきき方をする友人がいるのだ。 奇妙だけど。

 わたしは持ち合わせの化粧品で取り繕った顔をしているから どういう状況で今に至るか きっとこの人にはバレているよね。
 はずかしい・・・

 「いい匂いがしているけど 何か食べさせてもらえるかな?」
 「てきとーでいいの? すぐに用意できるものでよければ」
 「いやいや せっかく東京から来ているんだから てきとーじゃあないヤツでお願いしたいよ。 お腹を空かせている子がいることだし」
 「あっ。。。 わたしは てきとーでよろしいので」

 その人は わたしと海を交互に見ると 満面の笑みを浮かべた。
 「ちょうど、パンが焼き上がったところだから。 朝の9時に用意できるものだけを」
 「ここらの人達って 早寝早起きなんじゃあないの? 9時なんて余裕だろう?」
 「都会人の早起きと一緒にしないでもらいたいな」

 カウンターに入った白いコックコートを着た人と海の間には 信頼関係に似た温かいものが通い合っている。

 「奥さん 元気?」
 「ああ。 お昼前には来るんだけど。 ちびの世話があるから」
 「男の子だっけ? いくつになった?」
 「5ヶ月だよ。 毎日 人間らしくなっていく」
 「可愛くて仕方がない、って顔してるなぁ」
 「可愛くて仕方がないよ」
 「お父さん やっているんだなぁ」
 「嫁は そう思ってくれない。 毎日 怒られてばかりだよ」

 見知らぬ人達の会話だった。
 海の知らない一面が 目の前で披露されている。

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