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Kiss Again and Again
第5章 はじまりのはじまり

 みんなに心配してもらって 食堂を出た。
 電車は 無理かしら。 タクシーで帰ろうかな、なんて考えながら キャンパスを歩いていると 立花先輩に呼び止められた。

 「どーしたの!? それっ」
 「ちょっと 事故りました」
 「帰るところ? すごい 匂いだけど。 大丈夫?」

 匂いは 髪の毛からだろうな。 自分でも気分が悪くなりそう。
 みんなが 大丈夫? って聞く。 よっぽど 大丈夫じゃあなさそうなんだろうな。

 「はい。 今日は 帰ります」
 「電車は 無理でしょう?」
 「はい。 タクシーで帰ろうと思います」

 立花先輩は 笑っていない。 いつも笑っているのに。 ひとつ ため息をつくと
 「今日は 車で来ているから 送っていくよ」
 「あ・・・ 大丈夫です。 少し行くと タクシー 拾えるので」
 「タクシーだって 断られるかもしれないよ。 送っていくから」
 「でも 授業は?」
 「別に 今更でしょう。 そんなに拒否らないで。 迫ったりしないから」

 断る方が 間違っているのかも。

 駐車場までついて行き いざ車を前にすると それが密室なのに気がついた。
 あ・・・ 大変・・・
 わたしが 怯んだのに 気がついたらしい先輩は 首をかしげて 情けなさそうに笑った。

 わたしだって 情けない・・・
 こんなに親切にしてもらって ひどい仕打ちをしている。

 「車を汚してしまいます」
 「そんなこと気にするのだったら 申し出ないよ」

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