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女優
第2章 いざ本番

シャワーを終えてバスタオルで体を包み、
部屋へ戻ると監督が歩み寄ってきて
バスタオルを鷲掴むと一気に奪い取った。

「きゃあー」

愛子は慌てて胸と股間の前を手で隠した。

監督はしげしげと
愛子の均整のとれたボディを見つめ

「よしよし、下着跡がきれいに消えたな」
と満足そうに言った。

「マ、マネージャー!バスタオルを!」
と 体を隠すタオルを要求すると

「おいおい、今から裸を
カメラに納められるってのに
隠すもなにもねえだろ」
と、ベッドの上の男優が吠えた。

いちいち癪に触る男だった。

しかし、ある意味、
愛子の操縦法に長けていると言ってもよかった。

納得のいくように諭されるより、
喧嘩を吹っ掛けられる方が
愛子にとっては自尊心を沸き立たせられて
いい意味で開き直る事ができた。

「わかったわ。
じゃあ、メイクさんに来てもらってください」

メイクしてもらって、
さっさと今日のシーンを撮って
帰らせてもらおうと思った。

「メイクね、自分のメイク道具
持ってきてるんでしょ?
それでいつものようにやっちゃってください」

カメラマンとアングルの打ち合わせをしながら
監督はぶっきらぼうに告げた。

「メイクさんもいないんですか?」

愛子の声は怒りで震えていた。

「僕はね、リアリティーを撮りたいの。
わかる?リアリティーだよ。
プロのメイクよりも普段の君を撮りたいわけよ」

何がリアリティーよ、
要は人件費のカットじゃないの。

バッグから化粧道具を取り出し、
ドレッサーの前に腰掛けた。

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