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抱き屋~禁断人妻と恋人会瀬
第10章 花守乙帆 39歳⑧愛され拘束妻
「これは…?」

「今から言う通りに、その錠を外してみて」

 佐伯の言う通りに乙帆が、数字錠を外して中身を開くと、それが誰のものは一瞬で理解できた。

「この字…!亡くなった主人のものです…!」

 乙帆にとっては一目で分かるほどに見慣れた、そして久しぶりに見る、亡夫の筆跡である。

「佐伯さんはどうしてこんなものを…?」

「乙帆さんに会うにあたって、ご主人から送られてきたんだ。もう、亡くなる直前だったのかな…」

 内容は、本当にプライベートなものだ。肉親にすら見せるつもりもない死にゆく男の妻への本心だった。

 恐らくは乙帆にも、決して告げることはないつもりで書いたに違いない。

「これをあなたに見せるか見せないかは、僕の一存だと、ご主人は僕に手紙で書いてくれたんだけど…僕は乙帆さんとどうなっても、これは見せるべきだと思った。…だって今日まで、僕と乙帆さんがしてきたことは、亡くなった旦那様が乙帆さんとどうしても、してみたかったこと…いわゆる『妄想』だったんだからね」

「そうだったんですか…」

 乙帆はうなずきながら、ページを手繰った。懐かしい亡夫の筆跡に乙帆は息を呑み、行を目で追うたび思わず瞳が潤んでいく。

「主人は…わたしと。ずっと、エッチしたがっていてくれていたんですね…」
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