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抱き屋~禁断人妻と恋人会瀬
第10章 花守乙帆 39歳⑧愛され拘束妻
「あれ、もう濡れてるなあ」

「いやっ…ああ…」

 佐伯はたくまずして言葉責めした。持ち上がってめくれたラビアの陰から、ヌメ光るものを見つけてしまったのだ。

 まだプレイ前なので指で触りはしないが、乙帆はかすかに腰を揺らして、もう感じているようだ。

「そろそろ目隠しをしようか」

 佐伯は持参した仮眠用のアイマスクを、乙帆に装着した。そのときふいに、乙帆が言い出した。

「あの、一つお願いがあります…」

「はい、何でも言ってください」

 何だろうと訝る佐伯に乙帆は言った。

「今回だけは呼んでもいいですか。佐伯さんのこと…夫がいたときみたいに」

「僕が、亡くなった旦那さんの代わりを務めると言うことかな?」

「いえ…そう言うのではないのですが、一度でいいので夫婦でしているみたいに、感じてみたいんです」

「いいですよ。僕はなんとお呼びすればいいですか?」

「乙帆と呼び捨てて下されば大丈夫です。…ただ、わたしから佐伯さんのことを『あなた』と」

「もちろん構いません。それでいきましょう」

 佐伯はここまでずっと、自分は乙帆の亡夫の代わりと言う気持ちで務めてきた。今夜の締めくくりで、ついに夫婦を演じると言うのも、中々乙なシチュエーションだ。


「ところで、拘束はこんなものでいい?きつくないかな」

 佐伯はすでに口調を変えて言った。目隠しをした乙帆もそれに気づいたらしい。

「きつくないわ。…これで大丈夫よ『あなた』…」

 乙帆のあなた呼びは、中々しみじみした趣があった。これを聞けるのもまた、抱き屋の醍醐味だと、佐伯は沸き上がる感慨を噛み締めた。
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